キミに恋の残業を命ずる
きれいな男の人が突然現れて、助けてくれる夢…。
彼はお手上げだったデータをあっという間に整えて、わたしを苦しませた問題をあっさりと解決してしまった。
『魔法みたい…』
そして、そうつぶやいたわたしにやさしい微笑を浮かべて、
『…キミって、かわいいこと言うね…』
涼しげな笑い声を聞かせてくれた。
ふんわりとやさしくて、甘くて。
まるで、童話に出てくる王子様のような人だった。
気づいたら、泣いて腫れたまぶたを開けて眠りから覚めていた。
我ながら恥ずかしい夢を見たもんだ。でも幸せな夢だった―――って気を取り直して、ふたたびパソコンに向き合った。
けれども。
それが夢ではなかったことに、すぐに気づいた。
なぜなら、ディスプレイのデータはたしかに夢の通りにきっちりと数字が合っていたから。