キミに恋の残業を命ずる
「これでも、こうしてレッスンしてもらって、ちょっとはスキルが上がってるんですよ。普段の仕事も早くなってきてますし。
こうやってすこしずつでもスキルアップしていって、その延長上で自信を得られればいいのかな、って。そうしたら、ワンワン!ってくらいは吠えられますよね」


冗談めかして言って、ちょっと照れ笑った。
けど、課長は黙ってわたしを見ているだけだった。

う、墓穴掘った…。

慌ててパソコンに向き直って、操作を続ける。


課長は頬杖を突きながら、わたしの横顔をくすぐったいくらいじっと見つめていた。
けどふいに、ぽそりとつぶやいた。



「キミのそういうところ、俺、かなり好きだよ」



は…
突然なにを…


思わず見やると、課長はやわらかく微笑んでいた。どこか色っぽさを宿したキャラメル色の瞳を細めて。


「すっごく可愛いな、って思って」

「え…!な、なにを突然…」

「なんだか、こうしていると恋人同士になったみたいでうずうずしてくるね」

「う…うずうず?」

「うん。今すぐ抱きしめたい感じ…」


…わかった。

わかりました、あなたの腹は。

そうやってわたしの反応を見て楽しんでいるんですね?イジワル…!
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