キミに恋の残業を命ずる
「もう焼肉でいいじゃん、テキトーに材料そろえてさぁ」


投げやりに言った田中さんに、他の先輩たちは顔を見合わせた。


「…煙危なくない?」

「空調全開にすればどうにかなるわよ」

「臭い付きそう…」

「じゃあ入口も窓も開けっ放しにしておけば?」

「寒いのに?」

「じゃあ他にいい案あるの!?」


ヒステリックじみた言葉で田中さんににらまれれば、みんな黙り込むしかない。


田中佳代さん。

性格がきつくて、自分の思い通りにならないとすぐに機嫌が悪くなる女王様気質の持ち主。

総務部のお局様で、わたしへのいびりの主犯格だ。

最初は、きついながらも指導してくれていたんだけど、わたしのドジさとトロさに煮えを切らして次第にいびってくるようになった。

そして、それが合図かのように、他の先輩たちもこぞっていびるようになって、そして今の状態になった。
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