キミに恋の残業を命ずる
「えー、課長はお鍋好きなんですか?」

「うん好きだよ。色々な味が楽しめるなんて最高だよね。ぜひ実施してほしいなー」

「でも…」

「でも、ねぇ?」

「なかなか難しくて…」


と、顔を見合わす先輩たちに、課長は押しの王子様スマイルを向けた。


「大丈夫だよ、みんなが団結して協力し合えば。キミたちの努力の企画、俺も応援しているよ」


なんてキラキラ発言言われれば、無理とは言えない。

元来、王子様とは身分は高いもの。
その甘い笑顔の下には「高位の人からの要望は絶対だよ☆」という毒が隠れていた。

これはさすがの田中先輩も直感したようで、


「…じゃ、じゃあ絶対成功させてみせますね…!」


なんて応じてしまった。


田中さん…?さっきは「絶対無理でしょ」って顔してましたよね??
そんな無責任に応じてしまっていいんですかぁあ?



というか。

一番困ったのはこの方だ。



じろっ、とわたしは課長をにらんだ。

準備に無理があるって会話も聞いていたはずなのに、どうして無理強いするんですか?

もしかして、わたしを困らせて楽しんでいるんですかぁ?



「お邪魔したね。じゃあがんばってね」


なんてお言葉を残して悠々と去っていく課長だった。
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