キミに恋の残業を命ずる
課長のスラリとした後姿をうっとりと見送っていた先輩たちだけど、


「あー、どうしよ…」


空気はがらりと超ローテンションに変わった。


「あーあ軽々しく応じちゃって」

「だってあの遊佐課長が食べたいって言うんだもん、仕方ないでしょ!」

「これはもう、各自持参のパターンしかない?そもそもさ、予算少ないのに海鮮なんてどれくらいそろえられるの?」

「切り身よりまるまる一本買う方が安いってきくよ?」

「えーあたし捌き方とかしらないよー」

「生ものさわれなーい」


ため息ばかりの先輩たち。

苛立ちと投げやりが混じりだした空気は、次第にするどく尖って一人に向けられる…。


「じゃあもう準備は案出した三森に全部やってもらったら」


ついにトドメの一突きを与えたのは田中さんだった。
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