キミに恋の残業を命ずる





…なんだかこういうの、童話であった。


そう、『靴屋の妖精』。


靴職人のおじいさんが寝ている間に妖精が靴を作ってくれていて、翌朝起きてびっくり…っていう、かわいいメルヘン。

現代社会にもこんな奇跡が起きるなんて…!

と言っても、あの人は妖精って言うより、王子様って言う方があってたけれど…。


ってほんわかして、はっと我に返った。


しっかりしろわたし。
だから先輩にグズ子って言われちゃうんだぁ。

そんなわけない。きっと、別の部署で同じように残業していた人で、見かねて助けてくれた人がいたんだ。


そう思って一言お礼を…とオフィスを出たんだけれど、真っ暗で静まりきった社内を歩き回るのも気が引けて…。

時間も終電近いし、今日は諦めて明日捜すことにしよう。

そう思って昨晩は会社を出てきた。
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