キミに恋の残業を命ずる
「わ、わたし一人で?」

「当然でしょ?あんたが言い出さなきゃこんなことにならなかったのよ。責任とって一人でやりなさいよ」

「そんな…」

「当日は一応手伝ってやるからさ、鍋の味も材料の調達も準備も、ぜーんぶあんたがやってよね」

「それはちょっと…」

「きついんじゃない…」


さすがに他の先輩たちも顔を見合わせるけど、


「なに?文句ある?」


一喝されれば誰も口ごたえできない。


「大丈夫よ。最近三森残業もよくこなしてがんばってるみたいだもの。できるわよ」


皮肉のこもった言葉を最後に残すと、もうこの打ち合わせは終了、とのばかりに田中さんはミーティングルームから出て行った。
とりまきの先輩たちも、気まずそうな表情を浮かべながらも続いて出て行く。


一人残されたわたしは、出しっぱなしの机や椅子ををのろのろとなおしながらため息を零した。


どうして…。

どうしてこんなにひどいことできるんだろう…。

いつものことだけど…でも今回はひど過ぎるよ…。
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