キミに恋の残業を命ずる
「表だって助けてはあげられないけど、小さなことでも力になれるかもしれないから、なにかあったらわたしに相談してね。というか、今の親睦会のこと、うちの営業事務の子たちに協力させよっか?」

「え、そんな!」


多忙の営業部の人たちにご迷惑はかけられない。

恐縮するわたしに、亜依子さんはにっこりと女優さんみたいに素敵な笑顔を浮かべた。


「遠慮しないで!だってあなたのさっきの案、すごいいいと思うからぜひ成功してほしいし」

「ほんと…ですか?」

「ええ。元営業の田中より、ずっと冴えてるわ」


さらりと皮肉を言って、ウインクを投げてくれる亜依子さん。

言葉が出なかった。
たとえお世辞でも、わたしなんかが考えた案を社のスターの亜依子さんに褒めてもらえるなんて、うれしくって。


「詳細がまとまって人手が必要になったらなんでも言ってちょうだい。買物なりアシスタントなり、営業部からいくらでも回すから」

「ありがとうございます…」


深く頭を下げたわたしに、亜依子さんは穏やかだけど頼もしさを感じさせる笑顔を向けてくれた。


「負けないでね。応援してるから」


そして颯爽とヒールを鳴らしてミーティングルームから出て行った。
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