キミに恋の残業を命ずる
けれど…今朝社内を回ってあの人を捜しても、見つけることができなかった。

そもそも、あんなきれいな人がうちにいたら、先輩たちが毎日のようにウワサするはずだ。
けど、そんな光景は見たためしがないし「ちっともいい男がいない」とぼやきばかり聞くだけだった。



不思議なことって、起きるものなんだなぁ。

いったい彼は、何者なんだろう…。



そう考えて、今日一日、彼のことが頭から離れなかった。

ちょっと変わった出来事ではあるけれど、別に深くは考えず『通りすがりの人に助けられた』だけって軽く流してしまえばいいのかもしれない。

でも、わたしには、どうしてもそうはできない気になることがあった。



整ったデータを見て、夢じゃないと確信したのと同時に甦った感覚。

唇に残った、かすかな柔らかいぬくもり…。



もしかして…彼…。

データを直しただけじゃなくて…わたしにキスもしたんじゃないか、って思うから…。





…いやいやいや。


そればっかりは夢だ、妄想だよね…!
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