キミに恋の残業を命ずる
せめて社内に大きな台所があれば、わたし独りででも準備できるんだけどな。
冷蔵庫もたくさん入る特大サイズがあれば…そうちょうどここの冷蔵庫みたいに―――。


と、大きな冷蔵庫を開けようとして、わたしは動きを止めた。



あれ、どうしてもっと早く気づかなかったんだろう。


「どうしたの?」


冷蔵庫の前で突然黙ってしまったわたしを課長が怪訝そうにみつめる。



「お願いがあります!課長」



「わ、どうしたの急におっきな声出して」

「鍋パーティの準備のために、このキッチンを貸してくださいませんかッ」


なんでもっと早く気付かなかったんだろう。

下準備する場所ならあったよ。
この広くて設備のそろったキッチンならなんでもできる!


「わお、それは東大もと暗しだったな。ナイスひらめきだ」

「はい!親睦会は夕方だから、朝に配送してもらって準備をはじめれば、余裕で間に合います」

「ふぅうん。御見それしました。キミってけっこう切れ者かもね。がんばってね。応援してる」

「はい、がんばります!」


ひさしぶりに笑顔を取り戻せたわたしに、課長もうれしそうに笑い返してくれる。


協力してくださった課長のためにも、この企画絶対成功させなくちゃ。

なんだか、ますます楽しくなってきた…!









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