キミに恋の残業を命ずる

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総務課のだれもがまったく手伝ってくれないまま、鍋パーティーの日が来ようとしていた。


味付けを考え、人数を考慮して必要な食材と量を見積もり、出席者に持参してもらう分はお知らせの文書を作って配布し、こちらが準備する分は発注書を作る。
ここまでは、一人ででもどうにかできた。


けれど、一番の山場である下ごしらえはどうにもならない。
野菜や練物などの食材は、参加者に下ごしらえをし終わった状態で持って来てもらうように通知しているから大丈夫だけど、肉や魚貝類はこちらが準備しなければならない。

そこで頼ったのが、亜依子さん率いる営業部チームだ。

亜依子さんの命で、営業や営業事務の女性たちが快くその手伝いを引き受けてくれた。
親睦会がはじまる数時間前に会社に集まってもらって、肉類の下ごしらえをお願いすることになっていた。


これで残ったのは魚介類だけ。


これは、わたしが準備しなければならなかった。

鮭や鱈は切り身状態だと割高になるから、一匹まるまる買って切り分けようと思ったんだけど、けっこうみんな魚をおろしたことがないみたいで…これだけはわたし一人でやることになったのだ。


どこでやるかというと…もちろん課長のお部屋で。





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