キミに恋の残業を命ずる
「部長、あの臭いが充満した部屋で休めるかな」
「大丈夫だろ、アイツああ見えてけっこう図太いから」
「ふふ。課長と部長って、ほんとに仲がいいんですね。大学生の頃からの付き合いなんですよね」
「ん、ゼミの先輩だったんだ。人嫌いな俺が唯一心許した珍しいヤツ」
「親友ってやつ、ですね?」
「ん…まぁ、そういうのかな、うん」
あ、照れてる。
かわいい。
ふふ、と笑うと、課長もはにかんだ微笑を浮かべて、懐かしむような表情を浮かべた。
「ハーフってさ、最近ではタレントが多く出てメジャーになったけど、やっぱ俺が子供の頃はけっこう珍しがられてさ。特に俺は母親の血が濃くて、髪も目もこうだったから浮いてるように見えたらしくて、はぶかれることが多かった」
材料を運びながら淡々と語りだしたことは、課長の知られざる過去だった。
台車の音で聞き逃さないよう、わたしは集中して続きを聞いた。