キミに恋の残業を命ずる
じんわりひたっていると、ふと視線を感じてみやった。
課長と目が合った。


「ど、どうしたんですか」

「ん。それにしてもキミ、いつもよりきびきび働いてるなぁと思って楽しくて」

「む。どういう意味ですか?普段のわたしはどんくさいですもんね」


べ、とあっかんべをすると、課長はカラカラと笑った。


「そうじゃないよ。なんだか活き活きしてるって意味だよ」

「活き活きですか?」


まぁ確かに…。
大好きなお料理を扱うのは、普段のデスクワークよりずっと楽しいってのもあるけれど…。


『あなたのさっきの案、すごいいいと思うからぜひ成功してほしいし』


亜依子さんの言葉が、わたしを奮い立たせていた。

この企画を成功させられたら、きっとわたし、大きく成長できる気がする。

一人でいちから考えるのは大変だったけどやっとここまで進めれたし、亜依子さんを始め営業部の人たちともつながりができたのが新鮮でうれしいんだ。


わたしは課長を見上げてにっこり笑った。


「今日の企画、絶対成功させてみせますから」


課長は少し驚いたように目を開いた。そして、


「うん」


とだけうなづいて、ぽんと頭を撫でてくれた。





胸が高鳴ったのとエレベーター到着したのは同時だった。





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