キミに恋の残業を命ずる
こんな調子の二人の明るさは、精神的にも支えになってくれた。
時間との戦いの準備だったけれど、二人が笑わせてくれるからプレッシャーを感じずに打ち込めた。

思えば…総務部に入ってこんなに有意義に仕事できたのって、初めてじゃないかな…。


「本当にお二人には感謝しきれないくらいです。どうにか成功で終えられそうで、すこしは社会人らしい仕事できたかな、って」

二人は顔を見合わせた。


「よし、じゃあ近い内みんなで打ち上げ行こう!」

「あ、それいぃ!行こうね、亜海ちゃん」


わたしはくしゃっと満面の笑顔でうなづいた。


じゃないと、涙が出そうになってしまったから。



一方、準備は協力してくれなかった総務部の先輩たちは、こういう人目につく場所ではいかにも「みんなでがんばってます!」とアピールするかのごとく、飛ぶように働いた。

そして、そんな調子で今回の功労者役を横取りしたのも田中さんだった。


「いやぁ、今回の企画は田中クンが考えたのかい?実に楽しくて満足のいく親睦会だよ」

「よろこんでいただけて光栄です。これも部のみんなが協力してくれたおかげです」


なんていけしゃーしゃーと言って「もしよければわたしの異動の希望も考えてくだされば…」なんて付け足すのを忘れないところは脱帽の一言だ。
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