キミに恋の残業を命ずる
「え?北海道ってこんな蟹獲れたっけ?たしかこれって今時期しか取れない蟹だよね?俺が無知なだけ?」

「ま、間違えました!そこは…」

「やっぱり北陸産かー。やっぱり旬の名産品はちがうよね。実は今度開発部と営業部でも親睦会をやろうか、なんて言ってたところなんだけど」

「へーすてきですね。ますます結束が固まりますね」

「うん。そこでキミたちに訊きたいんだけど」

「はい…」

「今日の魚介はどこのお店で発注したの?こんな名産品を扱っているなんて、いい業者見つけたね」


いかにも興味津々で聞く課長。

総務部の面々は一瞬表情を凍らせて顔を見合わせた。


「え…っと」

「どこだっけ?ど忘れしちゃった」


ど忘れもなにも、知るわけがないよね。わたし以外。
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