キミに恋の残業を命ずる
亜依子さんだ!


颯爽とした姿と張りのある声が、その場に張り詰めそうになっていた気まずい雰囲気を打ち払ってくれた。


亜依子さんは普段はお父さんのことも「社長」と呼んで部下の立場でいる。
けれど、今は少し「娘」としての雰囲気が強い感じがした。


「社長、今日は遊佐課長にお会いできて良かったですね」

「そうだな。今までは遠い場所でがんばってもらっていたが、こうして社内行事にも参加してくれるようになってうれしいよ」


亜依子さんも、深々とうなづいて笑った。


「わたしも一緒に仕事できて光栄に思っています。なにしろ遊佐課長は社の英雄ですから」

「買い被りですよ。支えてくれた営業部のおかげです」

「ご謙遜を。そうだ、もしよかったら今度社長とわたしと三人でお食事でもいかが?アメリカでの出張生活とかお訊きしてみたいわ。わたしもぜひ課長と懇意になって、ますます仕事を有意義にしていきたいですし」
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