キミに恋の残業を命ずる
部長と社長が行ってしまうと、なんだかどっと疲れが押し寄せてきた。
そんなわたしを気遣うように、亜依子さんが笑いかけてくれた。
「今日は亜海ちゃんに感謝ね」
「え?どうしてですか」
怪訝な顔をすると、亜依子さんは意味深にふふふ、と笑って、手にしていたビールをぐいっとあおった。
「だって、こんなに素敵な企画にしてくれたんだもん。みんなだって、すーっごく楽しんで美味しいってよろこんでたわよ。そりゃ社長も興味持って降りてくるってもんよ。おめでとう、ほんとによくやったわね」
わたしは顔を赤らめながら首を振った。
「いえ、これも亜依子さんたちが助けてくださったおかげです」
「そんなことないよ。これはぜんぶ貴方のがんばりの結果だよ。田中のヤツ、「いかにもわたしが考えましたー」って顔をしてるけど、大丈夫、さっきの遊佐課長の計らいでみんな気づいたわよ」
「そう…ですかね…」
と苦笑するわたし。
別に周りから評価がほしかったわけじゃないんだけどな。こうして無事成功できただけで十分だし。