キミに恋の残業を命ずる
なんて恐縮に思っていると、亜依子さんはパンパンと手を叩いて、よく通る声で言った。


「はい、みなさん!お腹も満足しましたら、今回の立役者である三森さんたち総務部に労いの拍手を」


亜依子さんっ…!
さりげなくわたしの名前だけ浮かせて…っ!

幸い田中さんは気づいていないようで、エントランスホールに割れんばかりに響く拍手や、

「楽しかったよ!」

「また企画してね!」

酔った勢いで聞こえてきた掛け声を気持ちよさそうに受けていた。


拍手が鳴りやまない内に、亜依子さんがまた声を張り上げた。


「では宴もたけなわ―――と言いたいところですが…!!みなさん、実はこの後、駅前に出来たあの新名所、赤ロードテラスのダイニングバーで二次会を予定しています!営業部のサプライズ企画でー!」


おおぉ!

と拍手喝采はそのまま歓声のどよめきに変わった。
赤ロードテラスと言えば、最近オープンしたばかりで超話題の商業施設だ。
入っているお店はどれも流行りの人気店で、予約は常に一杯なのに。
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