キミに恋の残業を命ずる
「そのバーの運営会社様が我が社のお得意様でして、長い付き合いがあるよしみで、このたびオープン直前の多忙期にもかかわらず貸切の上に割引料金でご提供してくださいました!これはもう行くっきゃない!景品付きのイベントなんかも企画してますんで、みなさん遅れずに来てくださいね!」


二次会を企画してくれていたなんて初耳だ。
目を丸くしているわたしに、亜依子さんはウインクをして続けた。


「なんで、みなさん早く二次会に行くためにも、各自で後片付けしちゃいましょうーね!キビキビ素早く、お願いしますね!」


『はーい』


さすが亜依子さん…っ!
みんなをよろこばせてその勢いで片付けに向かわせてしまった。上司まで楽しげに片付けを始めるその乗せ方のうまさはぴかいちだ。

片付けはわたしたち総務部だけでやるつもりだったから、これは本当にありがたいことだった。


「二次会のこと、忙しそうだったから亜海ちゃんには後で言おうと思ってたの。ちなみに、田中には事前に了承を得てたから大丈夫よ」


これで少しは片付け楽できるでしょ?

とウィンクする亜依子さんにはもう感謝感激雨あられ。…そんなことまで考えてくれたなんて。
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