キミに恋の残業を命ずる
ぶるり。
…こういう状況ほど、こういうウワサを思い出しちゃうのはどうしてなんだろう…。怖くなってきちゃったよ…。
ここは早くオフィスに戻って、休憩がてらネットでも眺めて気晴らししよう…!
と、小走りに煌々と光る自販機コーナーに駆け寄るなり、入口近くの販売機に手早く小銭を入れる。
ホットココアのボタンを押して、落ちてきた缶を手に取った。
「熱…っ」
けど、急いで掴んだ缶は思いのほか熱かった。
つい手を離してしまって落ちた缶は、転がって自販機と自販機の隙間へゴロゴロ…。
ああもう、わたしってばこんな時もドジ…。
手を伸ばした。
けど…うう、なかなか届かない。
こんな時小柄でよかった。
自販機と自販機の間に身体を押し込んで、手を伸ばした。
もうちょっと奥…奥…。
コツ。
コツ…。
その時だった。
妙な音が、聞こえた気がした。