キミに恋の残業を命ずる

2

片付けを完了させて課長の部屋に行ったのは、八時近くなった頃だった。


だいぶ遅い時間で迷ったけれども、来てしまった。

今日の親睦会は、課長が応援してくれなかったら絶対に成功できなかった。
きっと途方に暮れて泣いて散々になりながら準備して、もしかしたら開催すらできなかったかもしれない。

だから、一言お礼を言いたくて。


仕事中かな、と抜き足差し足リビングに近づいて驚いた。


課長はソファで眠り込んでいた。


ちょっとお酒の匂いがする。

部屋に戻って何杯か飲んだようだった。


やっぱり疲れてたんだな。

自分の仕事も忙しいのに、わたしのことも手伝ってくれてたから。


課長…。
あなたってほんと、腹黒いというか腹の内を見せないって言うか…。

いつもからかって翻弄してきて、わたしが苦手なタイプの男の人って思っていたけれど。

その裏には、とても温かい心を持っているんですね。


グズでダメなわたしだけれど。
そんなわたしを、いつも支えてくれているのは、あなたのそのやさしさなんですね。



「…よし」


わたしはキッチンに行くと腕まくりして。
そっと鍋を出して火を点けた。






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