キミに恋の残業を命ずる
ぬきあし…

さしあし…


向かうのはリビングの奥にあるベッドルーム。


深い寝息が聞こえる。
課長はまだお休み中だ。

そっとのぞきこむと、王子様の寝顔が真っ白な枕に埋もれている。こうして大きめの枕を抱きかかえるようにして眠るのが課長のくせ、っていうことを最近知ったわたしだった。


ううん…まだ慣れないなぁ…このドキドキ感。


「課長…」


そっと声を掛ける。


「課長…起きてください。朝ですよ」


でも、なんてやさしく声を掛けて起きる人ではなかった。

課長の寝起きの悪さは最強で、これが在宅勤務を希望した一番の理由だというだけあって、ちょっと声をかけたり揺すったりしただけじゃ、びくともしない。


「もー!課長起きてくださいよぉ!」


ばっと掛け布団をはがして、課長のお気に入りの枕を奪い取る。


「んん…」
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