キミに恋の残業を命ずる

恐怖で身動きがとれなくなってしまった!
まぬけにも、身体を自販機の間に挟めたままで!
わたしってば、もう本当にどうしようもない…!
怖いよ…!



コツ…コツ…



なにかを探すように、足音はゆっくりとすぐそこまで近づいてきた…。

震えが止まらない。

わ、わたしこのまま、初霊体験してしまうんだ…!

ぼっち残業中に、はぢめての霊との遭遇…みじめすぎる…ぅう…!

もうやだ。やだよ…怖いよ…!





ふいに。

視界に人の姿が入りこんだ。



スーツじゃない。
白のハイネックセーターを着た背の高い…。


「ひっぁ…」


思わず上擦った声をあげてしまった。
すると、



ばっ!



霊もこっちを向いた!





「きゃぁあーー!!!!」

「うわっ!」





…意外なことに、霊もまたびっくりした声を上げた。
わぁあ…霊もビックリするんだなぁ…って。



あれ…?



「キミ…なんでそんなところに挟まってんの…?」

「ぅえ、え、え…」





あまりにもはっきりした喋り方で霊が話しかけてきたもんだから、わたしはしどろもどろしてしまった。
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