キミに恋の残業を命ずる
「よかったな、って、うれしくて…。すみません…朝から…」


ふふ、と課長は小さく笑った。


「やっぱり可愛いね、キミは」


ぽん、と課長の手がわたしの頭を撫でた。


「ほんとに…どうしようもなく、可愛い」


その手がゆっくりと下りて、頬を撫でる。
この動きをする時のキャラメル色の瞳は、決まってやさしくて穏やかで…蕩かすように甘い。


息もできずに手の動きに気を取られていると、ふいに、指がわたしの耳たぶを揺らした。


「最近つけてるんだね、ピアス」

「あ…」

「前は付けてなかったのに」

「い、いえこれは…」


課長が嬲るように耳を弄るから、わたしは声を上ずらせて返した。


「ピアスみたいに見えるイアリングです。ピアスは痛くて怖いので…」

「そっか。可愛いイアリングだね。すごく似合ってる」

「ありがとうございます…」


まじまじと見つめる課長の顔が近過ぎて…首に吐息があたってくすぐったい。
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