キミに恋の残業を命ずる
「あ、ありがとうございます。お世辞でもすご、すごくうれしいです…っ」

「お世辞なんかじゃないよ」


しょっちゅう赤くなる耳がおもしろいのか…課長は相変わらずわたしの耳を弄っている。
囁くように話す声が、指から伝わるように耳を震わせて、甘い刺激を感じる。


「きっと他の男もキミのこと可愛いって思ってるだろうね」


…ほんと、焦るよな…。


とつぶやいた声は、イラついたような低い響きをしていたけれど…どこか甘さもあって…。
胸が切なく締めつけられる。


「…課長…?」

「いつになったら、俺のこと好きになるの?」


…なに言って…。


「さてそろそろ出社しようかなー」


急に立ち上がると、課長は大きく伸びをした。

さっきの言葉なんてなかったかのように、課長の表情は普段に戻っていたけれど。
わたしの胸はいつまでも高鳴っていた。
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