キミに恋の残業を命ずる
「えっとこれはその、えっと」

「とりあえず…出てきてよ、怖いから」

「…あ、はいっ」


と、やたらいい返事をして身体を引いた。


けど…。



「あ、あれ?あれあれ?」



しまった。



驚いた勢いで身体が奥に入ってしまって、自力で出られなくなっちゃった…!



泣きそうになりながらジタバタしていると、霊…さんが苦笑い気味に言った。


「まさか、出られない、とかじゃないよね?」

「…はい…ええと…そのまさか、です」

「……」

「……」

「…どうしたらそんなところに挟まるんだよ…。ほら、じゃあ引っ張ってやるから、つかまって」


自販機に狭められた視界に、すっと手が入ってきた。

男らしく大きな手だけれど…わぁ…すらりとしてきれいな指…。



あれ…。

この指、見たことが…。
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