キミに恋の残業を命ずる
「ふふふ、お腹すきますよね。この時間が特に」

「んー。今日の昼は淋しくコンビニパン一個だったから余計にねー」

「それだけじゃ午後もたなくないですか?大変ですよね、営業の方って。あちこち飛び回ってお昼もきちんととれなくて」

「まぁね。たのしいけど。でも食生活はたしかに偏っちゃうかなー。俺一人暮らしだし、弁当作ってくれるカノジョもいないし」

「そうなんですか?」

「そうなんだよー」

しくしく、と泣きまねをするのが面白くて、思わず吹き出してしまう。


「富田さんって明るくてたのしいのに意外ですね?」

「ほんと?俺そんな風に見えてた?」

「ええ」


よっし!と富田さんはガッツポーズを取った。


ん?どうしてガッツポーズ?
と訝しむわたしに富田さんはちょっと近づいて、回りを気にするように小声で訊いた。
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