キミに恋の残業を命ずる
2
営業部を通り過ぎ、特別開発課に入る途中で、課長が我慢できないかのように低い声を絞り出した。
「俺に嘘までついて、他の男とデートに行きたかったのか」
「ち、ちがうんです、これには」
「どんなわけがあるって言うんだ?」
振り返った課長の顔は―――今まで見たことがない、ってくらいに怒りをにじませた表情をしていた。
でも、不思議とわたしは怖いと思わなかった。
その表情には、どこか傷ついたような悲しみも宿っていたから。
どうしよう…でも、嘘をついた本当の理由は言えない。
「今のやつなに?」
「なにって営業部の」
「そうじゃなくて。さっきって明らかにモーションかけられてたよね。迂闊だったな、キミ、予想以上に早く目を付けられてるね」
「目?そんな、わたしなんて」
「もうそういうこと言うの禁止。キミはもうすこしいろんなこと自覚した方がいい」
「俺に嘘までついて、他の男とデートに行きたかったのか」
「ち、ちがうんです、これには」
「どんなわけがあるって言うんだ?」
振り返った課長の顔は―――今まで見たことがない、ってくらいに怒りをにじませた表情をしていた。
でも、不思議とわたしは怖いと思わなかった。
その表情には、どこか傷ついたような悲しみも宿っていたから。
どうしよう…でも、嘘をついた本当の理由は言えない。
「今のやつなに?」
「なにって営業部の」
「そうじゃなくて。さっきって明らかにモーションかけられてたよね。迂闊だったな、キミ、予想以上に早く目を付けられてるね」
「目?そんな、わたしなんて」
「もうそういうこと言うの禁止。キミはもうすこしいろんなこと自覚した方がいい」