キミに恋の残業を命ずる
課長の部屋にたどりついて、がちゃり、とサムターンキーが回される。
いつものようにふたりっきりの部屋。
でも今日は、いつものような安らぎは全く感じない。


ほう、と課長が息をついた。


「俺と確認した雇用条件、忘れたとは言わせないよ。いつどんな時も俺の言うことをきくこと。俺の思い通りになること、俺に尽くすこと…」

「わたし、課長の召使じゃありません…」


「雇用」だなんて…そんな冷たい言葉で縛られたくない。

だって、わたしはあなたのことが…。


だから…。


「お願いです…。もうこんな関係「解除」してください…」

「…」

「こんなこともうやめてください…。もう嫌です」


本気の恋じゃないのに、まるで恋人のように扱われたってつらいだけ。
これ以上みじめな思いはしたくない…。
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