キミに恋の残業を命ずる
そっとその指を握ると、ぎゅっと強く握りかえされる。
ドキリと胸が高鳴った、のも束の間、
「せーのっ」
「イタっ…っあ、ちょっ…」
ぐいっと引っ張られた。
身体は思いのほかするりと抜けた。けど、そのせいでバランスを失って身体がよろけた。
「あ…っ」
「おっと」
ばふんっ
と倒れた先は、幽霊さんのハイネックセーターの胸の中だった。
ふわふわの生地に包まれた身体はとても温かくて…スパイスの効いた甘い香りが、かすかに鼻先をかすめた。
…この匂い、昨日もかいだ…。
思わず見上げた先に、端正な顔立ちがあった。
きめ細やかな白い肌に、細いあご。
綺麗な二重をした瞳は、吸いこまれそうに透き通ったキャラメル色をしていて…。
「あれ…キミは昨日の」
「妖精さん…?」
「…よう、せい?」
形の整った眉がひそめられる。
そうすると、ますます日本人離れしてみえる。ハーフなんだ…。
ほんとに見惚れるくらいきれいな顔…。