キミに恋の残業を命ずる
「課長には感謝しています。総務部でダメな子扱いされて落ち込んでいたのを引っぱってくれたのは課長です。
今は自信がついて、もっとがんばろうって思えるようになった。感謝してもしきれないくらいなんです。だから、もうわたし課長のサポートはいりません。独りで頑張ってみます。だから…」

「だめだ」


やっぱり、課長の言葉ははっきりとしていた。


「なにを自己満足しているわけ?俺に感謝してる?それなら、もっと俺に尽くすべきなんじゃないの?」


にじり寄ってくる課長…。
思わず後ずさるわたしだったけれど…

踵が当たった。

もう後ろは壁だった。


課長の左手が、乱暴にわたしの横についた。


「そばにいろ。いなきゃだめだ。これからも、ずっと、ずっと…」


近付いて来る、悲しげな顔を縋るように見つめた。


「どうして…どうしてこんなにも…」

「わかんないの?いい加減むかつくんだよ」

「…」

「好きだからだよ」

「…」

「本当にただのお手伝いさんとしか思ってるの?あんまり天然なのも困るよ…。
ただのお手伝いさんに合鍵なんてわたさない。ましてや秘密なんて明かさない」
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