キミに恋の残業を命ずる
あごに手を置かれ無理矢理上を向かされた。

びりと緊張がはしり、胸が甘く疼く。
怒りを含んだキャラメル色の瞳はいつもよりずっと濃厚で甘くて蕩けそうになる。
苦しい。
もう息もできない。


わたしの唇を物欲しそうに見つめて、課長は呟くように言った。


「言っただろ。この関係は終わらせない。キミを簡単に手放したりなんかしない。
この関係はキミが俺のことを好きにならないと終わらないんだ」

「好きになんか、なりません」


涙をこらえながら、わたしは訴えた。


「課長を好きになるなんて、絶対にありません…」

「嘘つき。じゃあ、どうしてそんな顔してるの。そんなキスしてほしくてたまらないって顔…」

「や…」


背けようとしても無駄だった。

腰に強く腕を回され、顎を持ち上げられ、微動だにできないまま、唇を塞がれた。

それは、初めて重ねられた時とは比べ物にならないほど激しくて、甘くて―――理性もなにもかもが蕩けそうになる。
でも、強く溶け残ろうとする恐怖に突き動かされ、わたしは喘ぐように漏らした。
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