キミに恋の残業を命ずる
「こんなのいや…。他に女の人がいるってわかってるのに…好きになるなんていや…」

「なに…?」

「わたしは…一体何番目のカノジョですか…?知ってるんですよ。この部屋に他に女の人がきているこ」

「俺を見くびるな」


低い声に遮られ、言葉をつまらせた。


「今までずっと、俺をそんな風に見てきたの?」


その低い声は、純粋な怒りの象徴だった。


「たしかに、キミに出会う前は好き勝手やっていて、いい加減な男だった。女なんてどれも同じだと思っていた。
…でもキミに出会って変わったんだ。変わってしまったんだ。
こんなに夢中になったのはキミだけなんだ…」

「…」

「なのにキミは、ある日突然現れて俺の毎日を壊して俺を変えた挙句に…ゲス扱いか?…俺をこんなにさらけ出させといて、抱いた気持ちは、疑いの気持ちだけなのか?」

「ちがいます…!そうじゃない」
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