キミに恋の残業を命ずる
課長は勝手で子供みたいなところがあって、マイペースで、意地悪だったけれど、でもやさしくて…。
いつもいつも、わたしを大切に接してくれた。
ひどい人だなんて、いつしか思いもしなくなっていた。


「信じて…いいんですか…」


やさしく、けれども強く強く抱き締められて、わたしはなにも考えられなくなって、ただその請うように染みるこんでくる温もりに溶けた。


それは

『帰さない…』

と鍋パーティーの夜に抱き締められた温もりと同じ強さだった。
わたしを強く求める、愛に飢えた孤独な人の想いだった…。


「いつだってキミがそばにいてほしかった。毎晩帰したくなかった。
他のやつのところになんか、絶対に行かせない。
…もう今夜は帰さないから」


甘い言葉をささやく唇が、わたしのそれに重なった。

甘い。
とても甘くて、なにもかもが蕩けていく。不安も怯えも迷いも…。


信じたい。

あなたを信じてしまいたい…。



そのまま空気を持ち上げるようにふわりと抱きかかえられ、わたしはベッドルームへと連れて行かれた。


そのまま、わたしは帰されることなく、課長と一晩を過ごした。










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