キミに恋の残業を命ずる
「おはよう」

「お、起きてたんですか」

「さっきね。そわそわ落ち着かないから目が覚めた。…まだ、実感ない?」


実感がないなんて思わない。忘れられないくらいじっくりと愛してくれたから。

だからこそ、顔が熱くなってうつむく。


「なんだか、うれしすぎてこわいくらいで…」

「こわい?…そうだね、俺も幸せすぎてやばい」


ぎゅうと抱きしめられた。

服をまとっていない身体は、熱い体温を知らしめてくる。
震える心にはじんと温かくて、安らぎがにじんだ。

自然と唇を重なり合わせて、わたしたちは微笑んだ。



「それにしても今朝は寒いなぁ…」


壁時計は明け方の六時をさしていた。


「タイマー設定し忘れたのもあるけど、今朝は一段と寒いよね」

「今、ヒーターつけてきますね」

とわたしはブランケットの一枚を身体に巻くとスイッチを押しに行った。
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