キミに恋の残業を命ずる
窓に近づくと一段と寒さを感じる。

ふと気づく、しんと静まりきった気配。

なんだか懐かしさを覚える朝の気配だ。
実家を出てから忘れていた、北国の朝の気配に似ている気がした。

わたしはそっとカーテンの隙間から窓をのぞいた。


「雪…」


思わずうれしくなって、わたしは課長に振り返った。


「雪が降ってますよ」

「へぇ、通りで寒いわけだ」


課長もブランケットをかぶってやってきた。
カーテンをあけると、綿帽子のような雪がゆっくりと地上に下りている光景がうつった。


「初雪だなぁ」

「そういえばそうですね…」


こんな時期にやっと初雪なのかぁ。
いつの間にか雪がない冬に慣れてしまったから忘れていたけど、実家がある地域はきっともう雪景色になってひさしいだろう。



「つもるかな?」


すこしワクワクした声で、課長が言った。
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