キミに恋の残業を命ずる
「どうでしょう…。きっと陽が昇りきったら溶けてしまうでしょうね」

「そっか」

「課長はあまり雪を見たことがないんですか?」

「ああ。生まれた場所も雪が降らない地域だったからね。雪をみるといつも積もらないかな、って期待してしまうんだ」

「ふふ、課長らしい」

「キミは案外クールだな…ってそっか、キミの実家は雪国だもんね」

「ええ。冬になれば辺り一面真っ白ですよ」

「綺麗なんだろうね」

「ええ…。厳しいけどその分だけ綺麗な光景ですよ」


抱き締めてくる温もりに身をゆだねながら、うなづいた。


「明け方、寒くて目を覚ますと、外はまだ真っ暗なのに、不思議と部屋が明るい時があるんです。
そういう時は、雪が降りしきって、映る世界すべてが真っ白になっているんですよ。明るいのは、月明かりや街灯を雪が反射しているせい」

「... 幻想的だね」

「…ええ。雪が音を吸収するんで、いつもよりもしんと静まり返っているんです。聞こえるのはさらさらとした雪が降る音ぐらい。
とっても綺麗で、厳かで、素敵な光景ですよ」

「…見てみたいな。その風景を、キミと一緒に」
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