キミに恋の残業を命ずる
「あ、ビンゴだ!もー亜海ちゃんってばわかりやすすぎ」

「ち、ちがいます、そんなんじゃ…!」

「いいよいいよ、隠さなくて」


ふふ、と亜依子さんはやさしい笑みを浮かべた。


「カレシ、いい人?」

「……はい」

「そっかぁ。カレシさんも幸せ者ね。亜海ちゃんみたいないい子と一緒に入れて」

「そ、そんなこと…。そう言う亜依子さんこそ、実は彼氏と会ってたんじゃないですかぁ?」


なにも言わず、亜依子さんはやさしい笑みに大人びた表情をにじませた。
それは、恋をしている女性しかかもしだせないような、慈愛を含んだ魅惑的な微笑だった。


「ほんと、人を好きになるって幸せなことだよね。…実はね、亜海ちゃんだけに言うけど」

「…」

「わたし、近々結婚するの」


「え!!」


いつか聞かされた言葉が浮かんだ。
やっぱり亜依子さんの噂は本当だったんだ…。
< 225 / 274 >

この作品をシェア

pagetop