キミに恋の残業を命ずる
「これから死ぬまでそういう面倒みてやらなきゃならないのよねぇ…。ああ、なんか思いっきり飲みたい気分になってきたわ。よし、じゃあ独身最後の忘年会たのしんでくるかなー」


と、お化粧直しをするのかな。
亜依子さんは小ぶりのショルダーバックをおろして、中からポーチを取り出した。



それを目にした瞬間、息が止まった。



あまり日本では見ないようなお洒落なデザイン。
ひとつひとつ色合いのちがう赤がタイル状に並んでいて、とても素敵でいかにも大人の女性が使っていそうなデザイン…。
見たことがある。同じようなデザインを…ううん、



このポーチを見たことがあった―――。



「…あれ、どうしたの亜海ちゃん。きもちわるいの?」


得体の知れない胸悪さが押し寄せてきて、わたしはシンクに手をついて口元を押さえた。
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