キミに恋の残業を命ずる
どうしてこんな時にこの人が…。


嫌な気がして…振り向けなかったけれど、きづかないふりをするわけにもいかず、わたしは苦々しい思いで振り返った。

そこにはやはり、今一番会いたくない人物が立ちふさがった



田中さんだった。


彼女はまるでわたしに最後通告を突きつける女王のように、勝ち誇った表情を浮かべていた。



「どうしたの?浮かない顔ね。新しい環境で有意義な毎日を送ってるはずの三森さんが、意外ね」


もう嫌味に付き合う気力も無かった。
早くこの場を去りたい。


「すみません…わたし、待ち合わせがあるんで」

「遊佐課長と?」

「…」

「バカな子。まだ信じてるの?」

「…」


弱ったわたしに、田中さんはどこまでも冷酷だった。
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