キミに恋の残業を命ずる
「今日わたしはおめでたいあんたに現実を思い知らせてやろうと思って来たのよ。日野亜依子、今日あんたたちの忘年会に来てなかったでしょ」
亜依子さんの名前がでて胸がじくりと痛む。
なんだろう。亜依子さんが、なんだというの。
「あいつが今までなにしていたか、教えてやりましょうか」
というと、田中さんはコテコテにラメコーティングしたスマホをかざした。
それは、彼女が投げたとどめのナイフだった。
わたしの喜びや幸福すべてを切り裂き、こなごなにする、残酷なナイフ。
夜の街に煌々と光るスマホの画面には、間違いなくわたしを絶望へ落とす動画が流れていた。
男性と女性。
オフホワイトのセーターが似合う美人の隣にはハーフの男の人が同じく微笑んでいた。
動画の中で、亜依子さんと裕彰さんがいる場所は高級そうなジュエリーショップだった。
カウンターに座って、店員に見せられているのは、指輪とおぼしきもの…。