キミに恋の残業を命ずる

2

その夜は、泣きはらした。

泣いて泣いてこの苦しみが消えるなら何時間だって泣く。
このつらい現実と切り裂かれるような失望が消えるのなら、身体中の水分がなくなったっていい。

そう思った。

でも不思議なことに、泣くほどにその痛みは強くなって、わたしの胸を締めつけた。



あの動画はきっと今頃会社の全社員に広まっているだろう。

あの遊佐課長と亜依子さんのスキャンダルだ。
誰もがうらやみ、そして祝福するだろう。
お似合いのカップルだと。お互いに相応しい相手に結ばれたんだと。



わたしは一体なんだったの。


ギブアンドテイクの雇用関係?
それすらもウソ。最終的に搾取されたのはわたしだけ。

わたしは、課長の言葉や行動にあっけなく騙されて、都合よく利用されただけだったの?


初めてこんなに人を好きになったのに。

初めて本当の恋を知ったと感じたのに。


結局わたしは、恋愛に疎い田舎娘でしかなかったの?
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