キミに恋の残業を命ずる
それにしても寒いな…。
タイマーの時刻にはまだけっこうある。もうヒーターつけちゃおう、とベッドから抜けて、ふと窓の外が気になった。
変だな…まだ日が出ていないのに、やけに明るい…。
カーテンを開けた。
そしてわたしは立ち尽くした。
いつも窓には灰色のコンクリートの街並みしかうつさなかった。
それが今は、一面真っ白。
夜空からはなおもしんしんと雪が降り続いていた。
それは、ここでは決して見ることができないと思っていた、厳かで幻想的な光景だった。
『いつかみてみたい』
そう、裕彰さんが憧れた景色…。
彼も今、この光景を見ているだろうか。
ごめんなさい。
裕彰さんごめんなさい…。
せっかく見たかった景色なのに、わたしと一緒に見たいって言ってくれてたのに。
隣にいれなくてごめんなさい…。
涸れたはずの涙が頬を伝った。
けどそれは、これまでとはちがった熱い涙だった。
やっぱり好き。
裕彰さん、あなたが好きです。
わたし、もう一度信じますね…。
こうして広がる白の景色のように、もう一度まっさらな心で、あなたを愛を信じます…。