キミに恋の残業を命ずる
亜依子さんがすっくとたち、静かの社長の隣に立った。

いつもの毅然としたパンツスーツ姿ではあるけれども、その顔には少し緊張した表情がにじんでいた。


次に立つのは…いよいよ裕彰さんだ。


他の社員たちも考えていることは同じようだった。
やわらかい茶色の髪をした後姿に、視線が一気に集まる。



「ここにいる営業部社員でわたしの娘でもある日野亜依子だが、このたび婚約したことを報告したい。―――相手は、我が社の優秀な人材である…」


すっと社長の手が最前の席に伸びた。



ざわり



ラウンジ内がにわかにざわついた。



だれもが紹介を受けて亜依子さんの隣に立った人物に目を見開いた。

わたしを含めて。


「紹介しよう。娘亜依子の婚約者であり、営業部部長を務めている服部友樹君だ」
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