キミに恋の残業を命ずる
『仕事はできるんだけどねぇ、それ以外はマイペースで、変わり者で、不器用で…』


そ…っか…。

この前の亜依子さんの言葉はたしかに服部部長に当てはまらなくもない…。


じゃあ…


じゃあ…


あの動画はどういうこと?


あのポーチが部屋にあった理由は??



拍手が鳴りやまない内に、服部部長が挨拶を始めた。
すでにその様子は専務らしい毅然とした風格をたたえていて、数年後に用意されている「社長」の大きな椅子さえも悠々と座りこなすだろう頼もしさがにじみ出ていた。


そんな未来の夫を終始まぶしげに見守っていた亜依子さんも、部長の挨拶が終わると静かに話しだした。


「みなさん、このたびは私事の発表のために朝の忙しい時間を割いていただき、またたくさんの祝福の拍手を頂戴し、心からお礼を申し上げます。
このたび、こちらの服部友樹さんと婚約が決まりました。先に社長から頂いた言葉の通り、ともども社のため皆様社員のために、邁進しつづけたいと思います」


すっと息をついて間を置くと、ここから亜依子さんは口調をすこしくだけさせた。
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