キミに恋の残業を命ずる
「ところで、先日おかしな動画とウワサが流れてきましたが、それをごらんになった方には、今日のこの発表がとてもおどろくものだったかと思います。
当該者のわたしとしましても、たいへんおどろき、また根も葉もない虚偽がさも真実のように出回ったことを大変遺憾に思います。
それは、わたしのみならず、社長や母、服部さん、そしてわたしの兄妹にとっても同様です」


え…?


耳を疑った。

さらりと言われた言葉だったけれど、今、一言だけ不思議なフレーズがあったような気がした。



「ね、今なんて聞こえた?」

「たしかキョウダイって言わなかった?」

「うん聞こえたー」


耳打ち合いが、またざわめきを生む。


そんな雑音を押し付けるかのように、亜依子さんがよく通る声で続けた。


「実は、あの動画とウワサの虚実性をさらに明確に表すために、皆様にお伝えしたいことがあります」


その言葉が合図のように、すっくと立ったのは、裕彰さんだった。
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