キミに恋の残業を命ずる

「ほんとに緑しかなくて、のどかだね」


広大な牧草地をまっすぐにのびる道路を走っていると、気持ちよさそうに裕彰さんが言った。


「ほんとに、なんにもないですよねぇ」

「それがいいんだよ。こののびのびした自然。空気。亜海が育った場所って感じがするな」

「どういう意味ですか?」

「そういう意味。のんびりぼわーんみたいな」

「もう」


ふくれて外に視線をやると、小高い丘の上に建物があるのが見えた。


「あれ?あんなところあったかな」


最近できたみたい。
行ってみよう、となってわたしたちは丘に向けてハンドルをきった。
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