キミに恋の残業を命ずる
それは、まるでお話の中に出てくるようなレンガつくりの素敵な建物だった。
牧場が経営しているファームみたいで、チーズなどの乳製品が売ってあった。
そしておどろいたのは、小さな教会があったことだ。
「うわぁ、こんなところに教会があるなんて。小さいなぁ!」
「なんだか、こじんまりしてていいですね」
「うん。…そうだ。式こっちで挙げるのはどう?」
「ええ!?」
わたしと裕彰さんは6月のジューンブライド。
憧れだったからと言うと、裕彰さんは「ジューンブライドなんて梅雨で客足減るのを防ぐためにブライダル会社が流したでっち上げだよ」と笑った。
「いいと思わない?ここは梅雨がないんだろ」
「でもこんなに小さな教会じゃ…」
裕彰さんの関係者ならものすごい人数がくるだろう。なのにこんな小さなところでは…。
「小さい?うそでしょ?」
裕彰さんは笑って、わたしを裏口まで連れて行った。
「ほら見て。これでも狭い?」
そこには、広大なガーデンが広がっていた。