キミに恋の残業を命ずる
遅い春真っ盛りが訪れている北国の六月。


やわらかな陽射しに誘われるまま微睡んでいたら、甘く低い声が耳をくすぐった。



「亜海」



もう聞きなれているつもりなのに、微睡みに揺蕩っていた意識は、そのいとおしい声に反射してしまう。


胸が甘く締めつけられて、いくぶんか軽くなったまぶたを開くと、わたしもそっと、声の主を呼ぶ。



「…裕彰さん」












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