キミに恋の残業を命ずる
果たして数十分後、亜海は無事俺の元に戻ってきた。
「よかった…ぁ!やっぱりここで待ってくれてた。戻ってきて正解…!」
はぁはぁと肩を上下させながらほっとしている亜海。
俺はうんうん、とうなづきながらうながす。
「それで今日は何が起きたの」
「きょ、今日はええと…ごめんなさい…妊婦のお母さんを手伝ってたらつい…」
「妊婦?」
うん、と続きをうながすと、亜海は申し訳なさそうに弁明を始めた。
迷子の男の子がいて、一緒にお母さんを見つけてあげたら、そのお母さんが妊婦さんで一人で重い荷物を持っていて―――
「で、一緒に送迎バスまで運ぶのを手伝ってあげた、と」
「はい…」
ごめんなさい…とぽつりと続いた。
「この前も黙ってはぐれるなって言われたのに…つい…」
しょんぼりうなだれる頭に、ぽん…と手をやる。
「だいじょうぶ。どうせそんなことだろうと思ってたから」
「…」
「だからほら、こうしてのんびり待ってやってただろ」
「…怒って…ない?」
「ないよ」
と言いながら頭を撫でてあげる。ちょっと強い力でごしごし。
「よかった。やっぱり裕彰さんはやさしい」
乱れた髪で、亜海はほんわかした笑顔を浮かべた。
そうすると、俺の心はまた瞬時にふやけてしまう。
やっぱり俺は、この子のこの笑顔にてんで弱い。
今度はやさしく髪を撫でてあげながら認める。
結局のところ、俺はこの子に完璧に溺れているんだな、と。
※
「よかった…ぁ!やっぱりここで待ってくれてた。戻ってきて正解…!」
はぁはぁと肩を上下させながらほっとしている亜海。
俺はうんうん、とうなづきながらうながす。
「それで今日は何が起きたの」
「きょ、今日はええと…ごめんなさい…妊婦のお母さんを手伝ってたらつい…」
「妊婦?」
うん、と続きをうながすと、亜海は申し訳なさそうに弁明を始めた。
迷子の男の子がいて、一緒にお母さんを見つけてあげたら、そのお母さんが妊婦さんで一人で重い荷物を持っていて―――
「で、一緒に送迎バスまで運ぶのを手伝ってあげた、と」
「はい…」
ごめんなさい…とぽつりと続いた。
「この前も黙ってはぐれるなって言われたのに…つい…」
しょんぼりうなだれる頭に、ぽん…と手をやる。
「だいじょうぶ。どうせそんなことだろうと思ってたから」
「…」
「だからほら、こうしてのんびり待ってやってただろ」
「…怒って…ない?」
「ないよ」
と言いながら頭を撫でてあげる。ちょっと強い力でごしごし。
「よかった。やっぱり裕彰さんはやさしい」
乱れた髪で、亜海はほんわかした笑顔を浮かべた。
そうすると、俺の心はまた瞬時にふやけてしまう。
やっぱり俺は、この子のこの笑顔にてんで弱い。
今度はやさしく髪を撫でてあげながら認める。
結局のところ、俺はこの子に完璧に溺れているんだな、と。
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